燃えよ!ナゴヤドーム!

フルカウント。これが最後の1球。全神経が指先に集中する。どんなコンピューターよりも正確に計算されそのボールは、数メートル先にある女房役のミット目掛けて放たれた。アドレナリンが分泌し、世界がスローモーションになる。頭の中で0と1の配列が寸分の狂いもなく並んでいく。「打てるわけがない」。手からボールが離れたコンマ何秒後に思う。なぜならそれには僕の持てる全ての「知」と「魂」が乗っているからだ。ボールは、流れ星の残光のように、一直線にミットに突き刺さる。その瞬間、地の底から震えるような大歓声がグラウンドに響く。僕はそれを感じながら、ただ、天を見上げる。照明がまるで星のように煌く。ああ最高だ・・。

という下らない妄想をしながら内野席に座る僕。輝くような緑とオレンジ色のグラウンドで艶やかなプレーをするベースボールスターたちを見下ろしていた。油っこいものばかり頬張りながら。今日はナゴヤ球場で見た以来十数年ぶりに、プロ野球を見に行ったのだ。その試合で原辰則がホームランを二本打ったのは鮮明に覚えている。そういえば試合前に本人に会ったこともあったな。ばあちゃんが巨人軍に知り合いがいたので会わせてもらったのだ。伝統ある巨人軍の4番に座る男は体も心も予想以上に大きかった。そんな原さんが今巨人の監督で数メートル先のベンチに座っているとは妙な縁である。ちなみに、今やテレビで大活躍の長島一茂にも会ったがこっちは器の小さい男だった。

そんな思い出を回想しながら、試合はどんどん進む。間近で見る選手たちの仕草はテレビで見るよりもとても生き生きとしていた。清水。二岡に帽子とグローブを持ってきてもらう清水。お礼を言う清水。ロコフランクのボーカルにどことなく似ている清水。駆け足で守備位置へ向かう清水。二岡。小笠原にも持っていってあげる二岡。優しい二岡。でもチャンスで凡退する二岡。悔しがりはしないクールな二岡。「ザ・クール」二岡。ウッズ。ホームランを2本打つウッズ。遠くからでも強そうなウッズ。ウッズはウッズでも決してタイガーではないウッズ。ピザのCMにフクシ君と競演しているウッズ。みんな躍動感に溢れていました。

ケツカッチンだったのでラッキーセブン終わりで帰宅した。試合は結局7−2で中日が快勝したようだ。残念ではあるが、そこまで熱心な巨人ファンではないので良しとします。地元だけに中日ファンが多かったが、子供から大人までいろんな年代の人が観に来ていて、さすが国民的スポーツだと思った。これだけ日本に浸透しているスポーツは他にないだろう。日本に娯楽提供し続ける野球と、チケットをくれた笹本さんとうちのばあちゃんに感謝します。