サラリーマンAの憂鬱 (1)丸の内マゾスティック


「ああ、今日は憂鬱だなあ」


名古屋駅近くのスターバックス店内の席に座りコーヒーゼリーフラペチーノを飲みながら、そんなことをぼんやりと思った。

視線を上げると会社帰りのサラリーマンやOLの群れが赤信号で止まっており、青信号になるとまるで民族大移動をしているかのように一斉に早足で歩き始める。もちろん、無言、で。

昔は「ふん、サラリーマンなんか・・」と無意味に否定してたけどいざ社会に出てその「サラリーマン」に接してみると「すごいなあ」と思うことがよくある。電話対応、接客、敬語、名刺・・・・・どれをとっても品格が問われるのだ。

それでもどこかで「平々凡々なサラリーマンなんかになんねーぞ」と思っている自分がいる。もしかしたらまだ「自分は特別な存在なんだ」と思っているのかもしれない。子供だな。


「いらっしゃいませ〜!」「フラペ3つのお客様お待たせしましたー!」「ありがとうございました!」


黙々と歩く群れの横では店員の威勢の良い声がする(ただ、サービスも行き過ぎると逆に鬱陶しくなり、耳障りにすら聞こえてくるのが何とも申し訳ないのだが)。

一番大きいサイズの「ベンティ」を頼んだはずなのに、そこにはもう空のカップがあるだけだった。


「よし、今日は家まで歩いて帰ろう」


そう決めた。今日一日でマックのフィレオフィッシュしか食べてないけど行けるとこまで行ってやる。もし途中でへばったら、そしたらティム、俺をグレッチで殴って。それともラーズ、SGで殴って。もしくはトラヴィス、ドラムスティックで殴って。


♪BGM 丸の内サディスティック/椎名林檎