メトロポリス・ナゴヤ

ryoma200x2007-06-02

メトロポリス・ナゴヤに来た。ナゴヤ程度でメトロポリスとは、と笑われるかもしれない。でも人口十二万そこそこの田舎の街に住む者からしたら十分「大都会」なのだ。

さすがに休日とあって人が多い。人を避けながら歩くのは面倒以外何者でもないが、一人なので周りを気にせず早足でシティボーイズやガールズを追い抜いていく。人間交差点とはよく言うが、僕と通り過ぎる人々のラインは一瞬だけ交わる。そそしてまた離れていく。ほとんどの人がもう一生交わることはないのだろう。そう考えると邪魔でしょうがなかった人々が少し愛おしく見えてくるから不思議だ。

腕を組んで歩くカップル。休日に買い物に来たOL。ピーチ姫みたいなドレスを着た萌え系。アタリスのクリス・ロウみたいな髪型の男性。化石のようなヤマンバギャル。ホストみたいなギャル男。ギャル男みたいなホスト。ふらふらと歩くホームレスの男性。池下駅で暖かい笑顔を振り撒いていた駅員のおじさん。うつむき気味の仕事帰りらしきコック。オシャレに目覚めた中高生。怪しい勧誘のおばさん。名古屋観光に来た中国人グループ。縦乗りで歩くBボーイ。・・・一瞬でも人生を共有できた人々と乾杯でもしたい気分になる。

歩き疲れたので栄のスターバックスでコーヒーを飲むことにした。普段なら抹茶クリームフラペチーノのような甘いものをたのむところだが、今日は苦いものが飲みたい気分だったので迷わずブラックを注文する。座ったカウンターの前の大きな窓に夜の街を左右に行き交う人々と僕の虚像が写る。その光景はまるで何の出来事もなく淡々と過ぎる映画のよう。

しかし、逆に言えばこんな深い映画はない。アクターは、脚本に支配されることなく、意思を持ってそれぞれのドラマを作り上げている。景色はずっと同じようで、一瞬だって同じコマはない。「ピーコも大絶賛!何にもないように見えて無限に広がる世界。何にも起こってないように見えて数え切れないドラマ。主人公は誰でもない、あなたです」・・・こんな宣伝文句はどうだろうか。我ながら、おすぎでは無いところが控えめでいい。

今日一瞬だけでも時間を共有した人々とこれからも人生の限りある時間を共有してもらう人々に溶けはじめた氷の冷たい水で乾杯し、スターバックスを後にする。今から僕もアクターだ。僕は僕だけのストーリーを紡いでいく。

♪BGM Jubilee/くるり