STOP THE CLOCKS

仕事ついでになんとなく立ち寄ったゲオでオアシスのベストを見つけた。ワゴンセールの常連たちに紛れてそのCDが異様なオーラを放っていたように感じたのは、ただ自分が好きなアーティストだからなのか。それともCDがただ異様に分厚かっただけなのか(3枚組なので普通のそれよりも3倍くらい太い)。選曲があまり好きではなく目新しさもないものを易々と買う余裕はないけれど、好きなアーティストのものぐらいお金を気にせずに買ってもいいではないか、と自分に言い聞かせてレジへ持っていった(というのは建前でポイントを使って税込200円弱だったと言うのが本当の理由)。どうでもいいけど、時間外になっていたとはいえ仕事中に購入するのは気が引けた。


購入したはいいものの、仕事の車はCDが聞けない。というよりもオーディオ自体がないのだ。これは、自分から言わせれば、車の良さを30%くらい失っている。車は密室で一人好きな音楽を大音量で、しかも周りを気にせず歌うこともでき、音楽好きには最高の乗り物だと思う。最近は携帯プレーヤーもたくさんあるが電車で聞く時には音漏れを気にしないといけないし、自転車や歩行中に聞いていると危ない。やっぱり音楽聴くなら車が一番の乗り物だ。鉄は熱いうちに打て、というがCDも聴きたいときが一番の聴き時だと思う。寝かせておいてふとした時に聴いてみる、という聴き方もまた面白いのだけれど。


やるせない想いを噛み殺しながら、しょうがなくラジオのスイッチを入れた。何を聴いても満たされないことは分かっていたが、気を紛らわすにはこれしかないのだ。軽快なDJとともにクリスマス一週間前らしく、様々なクリスマスソング(もしくはウインターソング)が流されていた。曲も食材と一緒で旬な季節があるものも存在すると思うし(クリスマスソングを真夏に聞いても良さが半減するように)、こういう独特の雰囲気もなかなかいいなあ、と思った。聴いていて幾分か気が紛れた。ただ一つ残念なのは、リスナーから寄せられる手紙やメールがもっぱらありきたりな恋愛の話だったこと。平和なクリスマスにこそあえて憲法第九条についてとか北朝鮮問題についてとか論争したら面白いのに、と思ってしまった自分はきっとひねくれものだ(というか変な奴)。


仕事場に戻るといつのまにか「オアシスが聴きたい」という熱も失せて、仕事の気分に戻った(というより戻された)。残っていた仕事を片付けさっさと家に帰ると、CDのことも忘れ、死んだように眠ってしまった。宿直で2日間朝から晩までみっちり働いた分疲れが溜まってたのだろう。次の日目覚めるとすぐに、まるで夢の中でCDのことを思い出していたかのように、カバンから取り出しプレーヤーで再生した。数秒後、2日間主がおらず少しだけ生活感を失った狭い部屋の中にロックンロールが鳴り響いた。サラリーマンの笑い声や遠く聞こえる車の音から将来への不安、山積する家庭問題まで、全てがアコギの音一つで吹き飛んだ。数十年後このCDを聴いたとき、社会がもっと廃していようが自分が何者になっていようが、同じ気持ちで聴いていたい、と心から思った。



(その後選曲の不満に関して、それだけいい曲がたくさんありすぎるんだな、と勝手に納得)