素晴らしい世界

ryoma200x2007-04-12

地元のビレバンのマンガコーナーで「松本大洋の次はこの漫画家だ!」みたいな特集をやっていたので、長いものには巻かれてしまう僕はつい買ってしまった。尾張の片田舎で大プッシュされていた漫画家、その名は「浅野いにお

「素晴らしい世界」という名の短編集なのだが、読みはじめはよくある青春モノかよと思っていた。しかし読み進めるにつれその世界に引きこまれていった。新人にして洗練された描写はとても美麗だし、何よりメランコリックな現代病に犯された僕らのような若者の心情が繊細に描かれたストーリーはとても巧いと思った。

バンドマンの登場人物が結構出てくるのもツボだったりする。短編のタイトルに「春風」や「ワンダーフォーゲル」など某バンドの名曲のタイトルから拝借したとおぼしきものが使われているのは音楽好きとしてグッとくるものがある。さらに作者は元バンドマンなのかただの音楽通なのかは分からないが、バンドの描写はかなり具体的である。映画化が決まった別作品「ソラニン」ではアンプやペダルまで細かく描かれていてナイス。

授業が早く終わったので大学のベンチで一人で読んでみた。読み終わった後、どこか心が軽くなった気がした。本の言葉を借りるが、優しくも悲しく、楽しくも切ない、そんなマンガである。

♪BGM 春風/くるり